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水窪川源流あたりを白倉川と呼び、周囲は国有林となっている。そしてその南岸の樹林を、白倉原生林と呼ぶらしい。

国土地理院の地図によれば、秋葉ダム北西に浜松市の白倉山(1027.1)がある。南側のいくつかの沢を集めた白倉川が、ダム下流へ合流している。これとは別の(通称?)白倉川は、長野県飯田市の白倉山(1851)を源とする。山脈の南にある西俣沢および東俣沢を主な水源とし、水窪川と名前が変わるまでを呼ぶ。水窪川起点の標識は、シヤウヅ山(1835)とトサワ山(1358)に挟まれた、道路が実線にかわるあたりにある。実際には、さらに下流までを白倉川と呼んでいるようだ。たとえば電源開発では、有本取水口を白倉川としている。
原生林は後者の白倉川の南岸になる。

まずは、水窪町内のR152を北上、標識に従って右折し水窪ダムへ向かう。水窪川北岸の本来のルートは、土砂崩れでしばらく前から通行止めなので、水窪駅へ向かう橋を渡り、水窪発電所脇を通る南岸の迂回路を行く。
しばらく行くと、T字路があり、右折すると水窪ダム、天竜スーパー林道へ向かう。ここは直進し、山王峡方面へ。
さらに行くと再びT字路。手前には渡元のバス停がある。左折すると超豪華な草木トンネル方面へ向かう。ここも直進して林道へ。
しばらく行くと三叉路になる。川原に下りられるので、家族連れがいたりする。このあたりを大嵐といい、廃校跡やバス停もあるらしい。ここは左手に取り、ダートを行く。

地図上の、道路が実線になるあたりには、厳重なゲートがある。人は脇(看板の裏など)を抜けられるが、車両は通行止め。その手前には10台は優に停められる広場があるので、そこから歩く。
水窪川起点はここ、ということになっている。
標高は900m弱。

前半にはところどころ植林されたつまらないところもあるが、ダートあり舗装あり。いくつもの沢あり滝あり吊り橋ありを進む。工事関連の小屋や設備のようなものも点在する。

1000mあるとはいえ、直射日光は暑い。しかし、風が通る沢は涼しい。
里山の沢と違い、先の見えないほど奥から流れ出てくる沢のほとりで、30分も座っていたら小寒さを感じたほど。

途中、完璧なコスチュームの渓流釣りの人にも会う。
写真のような沢が道路の下をくぐって、崖に近い傾斜で数10m下の本流に合流する。そんなところを登ってきたようだ。
釣果は聞きそびれた。

時間の都合もあり、6kmほどで折り返す。
スタート地点には、5.5kmで通行止め、との看板があったが、法面工事のちょっと危険な現場はあるものの、進もうと思えば進めそうではあった。

その先に見える景色。
左が白倉山、禿げた尾根を経て右端が小ピーク(2013)だろうか。さらに右には、浜松市の最高地点、中ノ尾根山(2296.4、山頂は川根本町)があるはず。
現在の標高は1300mほど。

おそらく、原生林とされているあたり。

原生林の範囲はよくわからないが、川の南岸なので対岸へ渡らなければならない。
道を引き返さずに源流付近から回り込むなり、手前にある黒沢山登山道入り口の、立派な、しかし落ちそうな吊り橋を渡るなりして、または渓流釣りに倣って数10mを駆け下るなりしなくてはならない。原生林自体も見るからに急傾斜で、まともな登山装備でなければ無理そう。

ほとんど車道のような道を歩いたが、いくつか目ぼしい物もあった。

ウツギが満開で、アサギマダラやモンシロチョウ、モンキチョウ(のような蝶たち)が舞っていた。

マタタビが満開。チャノキの花のような、清楚でかわいらしい花。雄株で木天蓼が盛大に生っていた。
ただ、咲いていたのはここだけなので、特別涼しいなど環境によるのかもしれない。

ネット上では、「木天蓼は実に虫が着いて虫こぶになる」という記述が多く、雌株でなければできない、と信じている人が多い。これは雄花と木天蓼だけが着く株であり、まず間違いなく雄株。蕾の段階から変形肥大して形成される様子がわかる。
最外周に緑化しつつある萼や花弁、ピンボケで判りにくいがその内側に僅かに覗くのが雄蕊、本体が(退化したはずの)雌蕊だろう。本体の中央部には必ず「つんつんの集合体」がある。蟲使いの蟲の触角を思わせるそれが柱頭と想像する。
場所によって木天蓼の様子も異なる。集合体以外にも「つんつん」があり、雄蕊まで合着したかのようなもの、雄蕊は雄蕊として機能して一応咲いているもの、など。
成長した木天蓼を切ってみると、中は中実で均一な「実」になっていて、また切り口はすぐに黒変する。

木天蓼は、春野町の平地、天竜スーパー林道北部、水窪ダム近辺、そしてここ、などで見ることができた。いずれも雄株と思われ「実が変化」してできたと思しきものはなかった。雌株自体が多くないため、雌株にはできないとは言い切れないが、混生している場所でも雄株にだけ着いていた。
確認のために春野町のその枝を採取して挿してみたが、やはり雄株だった。

葉がきれいに白変したマタタビ、若い実をたくさんつけたサルナシは至るところ見られた。

そして一株だけ、ピンクのマタタビ……ミヤママタタビがあった。残念ながらやや高いところにあり、葉がほとんど上を向いていたが、肉眼ではピンク色がよく判った。

初めて見る変なカエデ。

天竜スーパー林道の水窪ダムへ下りかけたあたりでは、チドリノキを見た。クマシデのようなスマートな単葉。もちろんカエデなので、対生でプロペラのような実を付けていた。

ここでは、こちらもスマートな3出複葉のメグスリノキ。若い枝や葉裏の葉脈上などに、白い毛が生えている。
これでもカエデ。名前もなんとなく格好いい。

さらにそばには、同じく3出複葉のミツデカエデ。
一回り小振りな葉で、緩めで大きな鋸歯がある。毛はほとんどないが、葉裏の葉脈の主脈と側脈との分かれ目に白い毛玉のように着いている。

風にそよぐサルオガセ類もあった。
遠くてよく見えなかったが、ナガサルオガセあたりだろうか。

他にも、見事な葉を付けたヤマブドウ(ただし雄株)があったり、赤熟黒熟した実をたくさん着けたサクラ類(甘酸っぱいが苦味を伴う)、まだ咲いていたエビガライチゴ、豊作のキリ、オニグルミ、サワグルミetc.
翌日には足腰に来たが、いい散歩だった。

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