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国立天文台からリンクされている映像
今日は満月。半月後の新月の日、21日朝には金環日食が起こる。日本の腹のあたりを金環食帯が通り、3大都市が入るため、人口の6割超8000万人が、居ながらにして見られるという。

おおむね、東京~静岡~和歌山南端~鹿児島南端あたりを中心線が通る。静岡県内では、沼津、静岡、磐田あたりがど真ん中らしい。もちろん浜松でも十分に金環食になる。7:30前後の4分ほどの間、リング状になる。
国立天文台のほか、多くの解説ページが立ち上がっている。

世紀のイベントなのでちゃんと見ておきたい。観測の方法はいろいろある。
肉眼では、日食グラスで直接見たり、木漏れ日を眺めたり。望遠鏡など機材を使うなら、同様に眼視用減光フィルタを通して見たり、投影板へ映して見たり。それらを見たまま撮影することもできるし、連続撮影と風景を合成するとか、食帯の限界ラインでベイリービーズを狙うとか、いろんなことが考えられている。

力の入った「観測」はプロやハイアマチュアに任せるとして、手軽に「観望」したい。もっとも手軽なのは、木漏れ日の観察。普段の「ぽぽぽっ」とした明るみが「わわわっ」となる。つまり、小さな丸い光の集合が、小さな輪の集合になる。ピンホールカメラと同じ原理で、手軽さはピカイチ。応用すれば迫力の大写しも可能かも、と考えてみた。

ピンホールカメラは、小さな穴(ピンホール)を通った細い光のスジが、スクリーンを照らす。太陽は見かけの大きさがあるため、見かけの大きさ分の角度を持った光のスジの束が、小穴を中心に太陽と対照の位置に逆さの像を作る。太陽の上から出た光は穴を通って像の下へ、右からの分は左へ、真ん中は真ん中で左下からのは右上を照らす。
細い光のスジというのは、実はピントが合った状態でもある。通常のカメラがレンズで一点に光を集めるのに対し、ピンホールカメラはそもそも一点分の光だけを使う。原理図を見れば判るように、穴から像面までの距離を自由に設定でき、長くすればより拡大される。ただ距離を変えるだけでいい。

一般には「焦点距離(像面距離)1mに対して1mmの穴が、だいたい具合がいい」などといわれる。そして、レンズの場合と同じで、1000mmの像面距離があれば、太陽や月は約1cmに投影される。この比は覚えやすい。
1m先の1mmの穴から来る光、というと真っ暗な感じもする。が、そもそも太陽の撮影には10万倍などの減光フィルタを使う。ルート10万倍(316倍)の大きさの穴から風景を覗くと思えば、さほど心配はない。
1cmの太陽像でも形はわかる。でも、せっかくなら1mぐらいで見てみたい。上手い具合に、ピンホールカメラは像面距離を変えるだけでいい。
単純に100倍して試してみた。

100m先に穴の開いた巨大な紙を置くのは大変なので、ミラーを使う。10cmの丸い手鏡で、100m先の建屋の壁に投影すれば、1mの太陽像が見えるはず……


100mあまり先の壁面に照射
下は、投影されている位置を丸印で示す
結果は……全く使えない

淡すぎて、動かしてみて存在が確認できる程度。間違いなく1mクラスの像にはなっているが、見えなくてはどうにもならない。
写真でも確認が難しいので、MS-Paintで投影された位置に白丸を描いておいた。

理屈を確かめるべく、ググる先生に聞いてみることにした。

ピンホールカメラは、ピンホールで絞られるので、常にピントが合ったような状態になる。したがって、像面距離次第でいくらでも拡大できる。穴を大きくすれば、明るくなるがボケる。小さくすれば、シャープになるが暗くなる。実は小さくするにも限界があって、光の回折の影響を考慮した最適値というものがある。
難しい考察はこのページほか、検索によっていくつもかかる

  φ=0.366・sqrt(f)

φが最適な穴の直径、sqrtはルートの意味、fは穴から像面までの距離。この式は緑色(550nm)によるもの。光の波長によって多少値が異なるが、おおむねこれで良いらしい。
先の例、像面距離1mで計算すると、1.16mmになる。一般に言われていることは正しい。ちなみにF864。写真レンズの100倍はある。

この式を見ると、像面距離がルートに入っている。つまり、単純に100倍しても都合よくはいかない、と言っている。
像面距離100mで計算すると、最適穴径は11.6mm。10cmの手鏡ではかなり大きく、ボケてしまう。最適穴径の場合は、F8640。もう何の数字なのか判らないレベル。
10cmの手鏡であれば、F値は1mのときのそれと同じになる。使えなくも無さそうだが、ボケること、壁面が汚いこと、周囲が明るいこと、などから見づらくなっているのではないかと考える。また、ミラーが大きくなると、平面の精度の問題も出てきそう。20mほど先を照らし、軽く鏡面を押さえるだけで、像が手ブレ風になるのを確認できた。ありふれた手鏡であるので、裏面鏡になっていることも、像の劣化に影響を与えているかもしれない。

中間的な10mあたりでも計算してみる。穴径3.66mm、F2730などと出る。
10mクラスの空間なら、いろいろ都合も付けられるので、暗がりに投影するよう仕向けられる。穴径も1cm程度にすれば、さほどボケずに10cmの明るい像が見られる。鏡の精度要求も緩くなると思われる。
木漏れ日もfは数mクラスであり、やはりこのあたりが腰のすわりが良さそう。


実は、簡易反射鏡ができないか、ということも妄想していた。
ピンホールでは限界があるが、レンズが使えれば様々な縛りから解き放たれる。

太陽光は強烈なので、透明素材で表面反射だけを使えば減光の手間が省けそう。また超長焦点なら、放物面だの1/8λだの面倒な話抜きに、だいたいの球面でOKでは、と考えた。F15ないしF20あたりなら、放物面と球面との差が十分な誤差に収まるらしい。

簡単を考えれば、アクリル、塩ビなどのプラスチック板が良さそう。円形の支持体に載せ、中央を窪ませる。口径300mm、焦点距離30m(D=300,f=30000)ならF100。平面から窪ませる中央の深さは0.375mm。100mまで伸ばせば、たったの0.113mm。
裏に接着したボルトなどで引くか、カセグレン穴様に空けてボルトナットで止めてしまおうか、それとも密閉して軽く減圧をしようか……

試しにCDケースを軽く変形させてみたところ、光束がうまく収束しない。
ググってみると、女子高生が、40cmのガラスを吸引で凹ませて望遠鏡を作った話が出ていた。アクリル板やステンレス板では均等に凹まず、使い物にならず。ガラスで何とか形になったものの、曲率が一定にならなかった、とか。周辺で支えて吸引することで、周辺がより大きく変形してしまうらしい。つまり鍋底のような形。
中央にボルトを通すなどすれば、ババロアかドーナツ座布団のようになりそう。
もっともこの女子高生版は、F3~F7可変とかなり難易度高め。F100クラスとは別の世界かもしれないが、大事になりそうで半月では片付かない、と結論付けた。


なんやかんや考えてはみたものの、問題は天気。この4連休に朝日を見られたのは1日だけ。3日間はおおむね「晴れ」だったものの、肝心なところで見えなくては話にならない。
練習代わりにと思っていた部分日食も、正月の夕暮れ日食も、月食富士も天気が悪かった。その後の深夜の皆既月食はよく晴れた。ツキは来ていると思いたい。

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