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あの山中伸弥氏が率いる京大iPS細胞研究所(CiRA)。ここの研究チームが、iPS細胞を使って、ALS治療の足がかりになる成果を上げているらしい。1日付で、その内容が発表された。


ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋肉が萎縮していく難病。意識などに影響はなく、筋力だけが衰える。発症数年で、外部との意思疎通が困難になり、やがて呼吸もできなくなる。運動神経細胞の異常であることまでは解っているが、治療法はまだない。
ルー・ゲーリック病などとも呼ばれ、著名人ではホーキング博士篠沢教授らが罹っている。

治療法の開発も困難を極めていた。患者から患部である神経細胞を採ることは難しく、実験動物による病態モデルの開発も、あまり進んでいなかった。
iPS細胞作成が実用化されたおかげで、患者本人の体細胞から本人のものと同等の神経細胞を得られるようになった。代用の実験動物などではなく、まさに患部そのもので研究できる。採取する体細胞は、皮膚など負担の少ない部位からで済む。
iPS細胞(CiRA/Wikipedia)は、よくES細胞(CiRA/Wikipedia)の比較対象にされる。この件は、対象者の細胞から作られるiPS細胞であるからこその成果といえる。

発表によれば、病態解明とそれに効果のある物質を確認した、とのこと。
患者3人と健常者5人から皮膚細胞(日経新聞記載)を採取。iPS細胞を経由して運動神経細胞を作成。両者を比較したところ、神経細胞の形状異常、および特定蛋白の異常蓄積が認められた。効果がありそうだとされるいくつかの物質を与えてみたところ、抗癌剤候補とされる「アナカルジン酸」によって、これらが解消されることを確認した。

これらは細胞レベルでの結果で、すぐ治療法に結びつくという話ではない。ただ、現物の患部相当を使用し、病態が解明され、効く薬剤が見つかったことは、不治の病に射す一筋の、でも明るい強い光であるといえそう。

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