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かなり作りこまれているCASIO EXILIM EX-10。たぶん一生使わないような機能まで満載している。
取説pdf)では端折っている部分があるので、星野撮影に関連しそうなあたりを調べ、性能については天文ガイドのT.G.Factory風(自称)にまとめてみた。

35mm換算f開放F
281.8
351.9
502.1
852.3
1122.5
光学系のスペックは、F1.8~F8、f=6mm~24mm。35mm換算では28mm~112mmに相当する。テレ端でもF2.5と明るいのが嬉しい。
撮像素子は、1/1.7型、12Mpxの裏面照射型CMOS。OLYMPUS STYLUS XZ-2と同じモジュールらしい。

通常のズームのほか、ステップズーム機能もあり、28、35、50、85、112mmに切り替えられる。表は、その際の開放F値。
絞りは1/3段刻み。ND8(3段)相当のNDフィルタも搭載している。
シャッタースピードは、1/20000~250秒。ただし、設定モードによる制限が多い。

いただけない点もいくつかある。バルブ機能がない。インターバル撮影機能もない。
ノイズリダクションやダーク引き(ダークフレーム減算処理)は、撮影条件によって強制的に行われる。調整、無効化などの設定はない。
RAWデータはDNG形式。ダーク引き前の生データやダークフレームは取り出せない。


レンズ性能を見てみる。
なお、以降の焦点距離表示は、すべて35mm換算値とする。

ISO400ISO800ISO1600
28mmF1.8F2.5F3.5
112mmF2.5F3.5
ワイド端、テレ端において、いくつかのF値で撮影。中央と周辺の星像を比較する。
露出時間は30秒。制限によりこれ以上延ばせないので、光量の差はISO設定で釣り合いを取る。

対象は、オリオン座上半身を中心とする範囲。
架台は、Vixen スーパーポラリス赤道儀で、自動ガイド。

最高解像度(12Mと呼称)の4000×3000pxのJPEG画像から切り出す。
仮に12MをA3に印刷した場合、短辺をはみ出し長辺に合わせるとして、1mmあたり9.52px、242dpiになる。切り出した範囲の長辺長は、約6.7cmに相当する。


28mm F1.8

28mm F2.5

28mm F3.5

112mm F2.5

112mm F3.5

112mm F3.5
画像切取りの位置関係

絞り開放では、非点収差がよく判る。周辺星像はサジタル(サジッタル:sagittal)コマフレアが目立つ。よくある鳥が羽を広げた形。中心星像も、ハロのせいか、ふっくら見える。
一段絞ると、サジタル収差は見えなくなり、中心星像も引き締まる。ただし、2等星クラス以上では、絞り羽の回折による光条が見える。メリジオナル(メリディオナル:meridional)方向の収差は残る。
二段絞ると、周辺星像の収差がより小さくなっているように見えるが、敢えて絞りたいほどの効果は感じない。

周辺減光は、焦点距離にかかわらず目立たない。階調補正を強くかけると、四隅の切り取った部分の半分程度の範囲で、光量の落ち込みが感じられる。


F1.8   F2.2
F2.0   F2.5
絞りは1/3段ずつあり、せっかくの明るいレンズなのであまり絞りたくはない。ひと絞りでだいぶ画が変わっていたので、開放~ひと絞りまでを見てみた。
28mm、ISO3200、4秒固定撮影。12M画像の左下隅を切り取って並べてある。明るい星はカペラ。

開放でサジタル収差、ひと絞りで光条が見える。中間の絞りは、やはり中間的。
異形星像を避けたい場合には、2/3~1段ぐらい絞ったあたりが、明るさを保ちつつ星像も整いそう。

なお、少し星が流れて見えるが、これはメリジオナル収差と思われる。
日周運動は、上方向やや右寄りだが、元画像の中心星像は流れていない。


ISO設定による画質の変化などを見てみる。

ISOダーク引きされる
最小露出時間(秒)
最大露出時間(秒)
12800 - 1
6400 - 2
3200 5 30
1600 5 30
800 5 30
40010 30
20010 30
10010 30
8010250
まずは、感度と各種設定の縛りについてまとめる。

通常使える感度は、ISO80およびISO100からは倍々でISO12800まで。それぞれには許される露出時間がある。
また長時間露光時には、強制的にダーク引きが行われる。その最小露出時間も記しておく。素子の問題なので、F値やNDフィルタの有無は関与しない。

一定以上の感度、露出時間で撮影した場合、ダーク画像取得時間が余計にかかる。
たとえばISO3200で4秒露出した場合、1秒とおかずに次のコマを撮影開始できる。ところが5秒露出すると、次のコマに移るのに6秒ぐらい(ダーク画像撮影時間+α)かかってしまう。
ISO400で30秒露出したとすると、1分に1枚撮ることができない。250秒露出は試してないが、同じ処理なら4分以上何もできないことになる。

2017/5/19 追記:
250秒露出では、やはり250秒のダークマスク撮影時間が追加される。
低ノイズ、高感度(対フィルム)なISO80でたっぷり露光、は美味しいモードではあるのだが、1時間に7枚しか撮れないのは厳しい。


ISO12800 1s

ISO6400 2s

ISO3200 4s

ISO1600 8s

ISO800 15s

ISO400 30s

ISO12800 1s RAW

ISO400 30s RAW

112mmF2.5にて、オリオン座下半身あたりを撮影。Bloggerでは1600px超は縮小されてしまうので、12M JPEGから1600px分をトリミングした。
最後の2枚は、今回撮ったうちの両極端の、RAW画像からの切り出し。ISOを変えていくと、リニアにノイズの量も変わっていく。

高感度域では、背景に大きな赤い斑が発生している。微恒星は溶けて無くなっている。RAWに見られる激しいノイズを抑えているわけで無理もない。景色を撮ってみても、色むら、細部の潰れがよく判る。
ISO3200まで下げると、斑は落ち着いてくるが微恒星は相変わらず。ISO1600で星数が増える。NGC2024(三ツ星の左上)の暗黒星雲が辛うじて確認できるようになる。
ISO800ではさらに星数が増える。ISO400では星数は変わらないが、背景に巣食う暗黒星雲っぽいノイズが減る。M42も滑らかになり、黒点ノイズもほぼ無くなる。

RAWのISO400は、それなりに見れる。ISO1600などの高感度フィルムをルーペで見るとこんな雰囲気。トリミング範囲外だが、M78も確認できた。
星数の増えるISO800ないし400あたりで枚数を稼いで、コンポジット後に強めの処理を掛けたら、結構見られる画が撮れそうな気がする。


偽色テストをしてみる。
上の各種テストを見ても、けっこう星の色が判る。さてそれは本物か、調べてみた。


28mm RAW

28mm JPEG

112mm RAW

112mm JPEG

ISO1600、F2.5、5秒露出、固定撮影で、ガーネットスター(ケフェウス座μ)近辺を撮ってみた。28mmでは中央やや下、112mmは中央より左下の明るいのがそれ。
12MのRAWおよび高精細JPEG画像から、中央1600px分をトリミングしている。

28mmは1分おき、112mmは15秒おきに撮影し、4枚分をYimgで比較明合成(「最大」コンポジット)した。
天ガのテストでは彩度を上げているらしいが、上げても変化が感じられなかったので処理してない。

RAWで見ると、高感度なので背景ノイズが多い。かなり明るい星以外は、色が変わりまくり。色の判別は不可能。
JPEGでは、背景ノイズはかなり抑えられ、ぬか星たちの偽色も抑えられている。ところが、明るい星に妙な色が着いている。

28mmJPEGでは、まさに柘榴石のごとく、ガーネットスターが赤から緑まで変化している。RAWではオレンジ色でほぼ安定。
112mmJPEGでは、ガーネットスターは安定しているものの、それに次ぐ明るさの星で似たような変化が見える。
どうもJPEG画像の「色」は、癖があるらしい。ぬか星なら色は抜かれ、輝星ならちゃんと色が出る。その間では、激しい偽色が出ることがある。

JPEGのこの癖は、少々悩ましい。


ピント合わせについても確認してみる。

いままでに扱ったデジカメ、一眼レフレンズなどには「∞」というピント位置があった。
フォーカスリングをいっぱいまで回すとか、選択肢で選ぶとか、ともかく再現性高く容易に合わせられるようになっていた。
EX-10でも、マニュアルフォーカスのインジケータ右端が∞となっている。が、じつは∞ではない。ピント∞という選択肢もない。


28mm F1.8
トリミング部分

∞側いっぱい
∞-6クリック
∞-12クリック

112mm F2.5
トリミング部分

112mm中央部分

112mm左上部分

28mmは、F1.8、ISO400、30秒露出。オリオン座付近。
フォーカスを、∞いっぱい、∞-6クリック、∞-12クリックで撮影し、トリミングして、上から順にタイリングした。
以前の記事でピンボケだと思っていたものは、それほどボケてなかったらしい。

112mmはF2.5。ISO1600、5秒露出。ガーネットスター付近。
∞いっぱい、∞-9クリック、∞-18クリックで撮影。40秒間隔で撮り、比較明合成したもの。

いずれのfでも、フォーカス∞端では赤系の滲みが見え、サジタル方向の収差が大きくなる。
フォーカス手前側では、緑系が見え、メリジオナル方向が主となる。

MFでフォーカスをいじると、中央部分が強拡大されて、ピント合わせをサポートしてくれる。2等星ぐらいの明るさがあれば、ピント具合は判る。
フォーカス可動範囲内にピントがあるので、合わせることは可能だが、この件はマニュアルには書いてない。
個体差なのか不具合なのか設計上の仕様なのか。いつか確認してみたいと思う。


ついでなので、タルタルテストもしてみる。
以前使った方眼パネルの全体が写るように距離を調整し、オートフォーカスで撮った。


タルタルテスト結果
RAW画像は4072×3044px。12M JPEGの4000×3000pxより気持ち大きい。
単純に「真ん中のいいところ」を使っているのかと思ったが、そうではないらしい。像面補正を掛けた上で切り出している。

28mmは、樽型の歪曲収差がよく判る。RAWとJPEGとを見比べると、だいぶ修正されている。

112mmでは、ごく僅かな樽型収差が見える。JPEGの補正を見ると、さらに樽型に補正している……と思ったらちょっと違う。
よくよく見ると、中心はやや拡大、中心から2.5cm目盛りあたりがもっとも周辺に動き、さらに2.5cmあたりの四隅は動かない。
陣笠型収差があり、弱い樽型に修正しているのではないかと想像する。

ちなみに、28mm、112mmともに、四隅ではピントが合ってない。多少の像面湾曲もあるらしい。

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